アイデム写真コンテスト「はたらくすがた」2025年審査員講評

選考委員

榎並 悦子

写真家

今年もたくさんのご応募をいただきありがとうございます。みなさんが撮影した「はたらくすがた」からたくさんの元気をもらいました。

お父さんやお母さんの職場を初めて訪ねて撮影した方も多く、コメントからは、家では見られない表情や働く姿に驚いたという声がたくさん寄せられていました。笑顔で頑張る姿を見て「カッコイイ!」「ステキ!」と感じた気持ちが、そのまま写真に表れていて、とても温かい気持ちになりました。

写真には、家族だけでなく、先生やお医者さん、職人さん、スーパーで働く人など、いろいろな仕事の場面が写されていましたね。身近なところにこんなふうに働く人たちがいるのだと気づかされました。一枚一枚の写真からは、どうしたらうまく撮れるかを考え、話しかけたり、笑顔を引き出したり、角度を工夫したりして撮影した努力が伝わってきました。

みなさんが見つめた「はたらくすがた」には、人の温かさや前向きな力があふれていました。どの作品にも、それぞれの視点とやさしいまなざしが感じられました。

今年も心に残るすてきな作品をたくさん見せていただき、ありがとうございました。

選考委員

清水 哲朗

写真家

自分のすがたは自分で見ることはできません。誰かの目を通じて印象を聞いたり言葉にしてもらったり、写真や映像、絵を見たりすることでようやく客観視できます。みなさんが撮った「はたらくすがた」は被写体になってくれた人にはどんな風に見えているのでしょうか。ぜひ、撮らせていただいた人にお礼を伝えながら写真の感想を聞いてください。

毎回注目しているのは小中高、世代ごとの視点や被写体選び、距離感・接し方の違いです。被写体にグッと近づき、レンズを向ける小学生。保護者を被写体に選んだ作品が多いですが、日頃接する保護者とはたらくすがたとのギャップを一番に感じるのでしょう。特に低学年の感じたままに撮る写真とコメントにはハッとさせられます。中学生になると照れに遠慮、相手や周囲の視線が気になりだし、被写体との距離感に個人差が出ます。保護者含め、人と接する距離を意識するのは大人への歩みであり、大いなる成長です。無理せず今の距離感で撮影することで自分らしさを表現しましょう。高校生は保護者よりも他人に対する興味が上回ります。撮影や表現技術、使用機材も一気に向上し、真剣さや緊張感が伝わる作品が増えます。今回は働く環境や周辺情報の少ないポートレートが多めでしたが、そこのバランスを追求していたら高評価されていた作品があったのも事実です。

選考委員
五味 ヒロミ
絵本文章作家

今年もすばらしい作品を拝見しました、ありがとうございます。作品を拝見する時に、私は必ずコメントをよく読みます。今年のコメントには、働く人に対して「かっこいい」「かっこよかった!」という言葉が大変多かったのが印象的でした。

「かっこいい写真を撮るぞ」と狙わずとも、真剣に働く人の姿はかっこよく撮れてしまうのですね。それに自然と気づくことができたのも、作品の価値だと思いました。

また、私自身が思わず「かっこいい!」と声が出てしまった作品が多くありました。女性の電気工事士さん、消防士さん、トラック運転手さん等の写真には「すごい!かっこいい」と。また、男性の保育士さんや看護師さん等にも「かっこいいね」と……私の固定観念は吹き飛びました! みなさんの作品から仕事に就く男女差が少なくなり、今は活躍の場がどんどん広がっているのだと感じました。新しく世に出てきた仕事、昔から続いていて守りたい仕事など、仕事の種類も多種多様です。男女差なく多様などの仕事にも、一生懸命取り組む働く人はかっこいいですね!

これを機会に、もっともっと身の回りの様々な働く人のかっこよさに気づいてください。そして、時にはシャッターを切ってみるのもいいですね。

選考委員
吉田 由紀
朝日学生新聞社 統合編集センター長

写真は撮る人と撮られる人とのコミュニケーションだと、審査を通して改めて感じました。撮影現場でこんな会話があったのかな、ちょっと体験させてもらったりもしたのかしら、などと楽しく想像しました。

あふれる笑顔の写真からは、若いみなさんからカメラを向けられたうれしさが表れていて、見ていると実に幸せな気持ちになりました。いっぽう、真剣な表情をとらえた作品からは、仕事に向き合う緊張感が伝わります。カメラを向けたみなさんも息をのんで真剣なまなざしを向けていたのではないでしょうか。人物とともに写っている仕事場のようすにも、見たことのない仕事道具や機械など大変興味を引かれました。

写された「はたらく人」の年齢や性別、肌の色がさまざまなことも、強く印象に残りました。私たちの毎日の生活は、食べるものや住む場所、お店や病院に学校、遊びに行く場所などあらゆるものが誰かの仕事に支えられています。それは多様な仲間たちがともに担ってくれているんだなと改めて実感しました。写真は今の社会の貴重な記録でもありますね。

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