選考委員
榎並 悦子
写真家
選考委員
清水 哲朗
写真家
写真は見るだけでなく「読む」面白さがあります。写っている人の表情を見れば、仕事の大変さや撮影者との関係性が見えてきます。写っている人の周囲を見れば、働く環境が見えてきます。服装を見れば、その人の好みだけでなく、温度や季節、現場に必要なものがわかります。さらにはこの時、撮った人はドキドキしながら声をかけたのかな。会話をしながら撮ったのかな。尊敬やあこがれをどれだけ抱いていたのかな、なども想像すると一枚の写真からいろいろなことが見えてきます。本コンテストではタイトルの他に文章も添えられるのでより状況やその時の作者の思いが伝わってきます。
また、世代ごとの視点や被写体との距離感、接し方の違いも本コンテストではよく表れています。被写体にグッと近づき、レンズを向ける小学生。照れに遠慮、相手の視線が気になり、被写体との距離感に個人差が出る中学生。撮影・表現技術が段違いに向上し、保護者よりも他人に対する興味が上回る高校生。この傾向から成長を読み取れるかどうかは専門家でないのでわかりませんが、被写体に選ばれた人たちは皆、喜びが感じられ輝いています。撮る人も撮られる人もそれを見る人も喜ぶ写真って良いですね。
私が審査に初めて携わらせていただいた4年前と比べて、食品や医療等必要な場面を除いても、マスクをしている姿の写真がぐっと減ったと感じました。だからこそ、働く人の真剣な顔、心から笑った顔、力や心を込めている顔を写真に収めることができたのでしょう。そのさまざまな顔は、シャッターをきったみなさんにたくさんの“気づき”を教えてくれたのではないでしょうか。
(私は働いている時、どんな顔をしているでしょう)みなさんの作品を拝見しながら、そんなことを考えました。さて、みなさんは何かを成している時、どんな顔をしているでしょう。
コメントにはこんな声が多かったです。「いつもは面白い祖父の真剣な姿を初めて見た」「ふだんは厳しい母もこんな優しい顔で仕事をするんだな」などなど、いつもと違う意外な一面を見ることができたと。そして“仕事に誇りをもっている”姿に触れ、「私も将来、こんな風に仕事をしたい」「大きくなったら〇〇になりたい」とも。将来のことを考える場面に出会い、作品にしたことは、みなさんの宝物の経験ですね。この“気づき”を得たみなさんの想いこそが、作品と共に価値があると感じています。
今年もすばらしい作品を拝見することができました。ありがとうございました。
初めて審査に参加しましたが、どの応募作品にも働く人への尊敬やあこがれの気持ちが素直に表われていて、見ていて幸せな気持ちになりました。
写っている大人たちの顔からは、働く喜びや仕事への誇りを感じました。若いみなさんがカメラを向けたからこそ引き出せた表情だと思います。仕事の内容や工夫、大変なこと、取り組む気持ちなどを質問しながらシャッターを押したのでしょうか。撮影の場でどんな会話が交わされたのかな、と想像しながら見ていると、その場でいっしょに職場見学をしているような気持ちになりました。
また、仕事道具や仕事をしている周りの環境もしっかりと入れるなど、「何を写したいか」がはっきりと伝わる写真が多いと感じました。いまはSNSなどで魅力的な写真に触れる機会が多いことも影響しているのでしょうか。みなさんの高い技術にとても驚きました。
大人でも、ふだん接する職業の種類はそう多くはありません。作品を見て「こんなお仕事があるのか」と、さまざまな職業に出会えることも、このコンテストの魅力の一つと感じました。
今年もたくさんのご応募をいただきありがとうございます。みなさんが撮影した「はたらくすがた」は、どの写真もとても興味深く、一枚一枚に込められたメッセージをしっかりと受け取ることができました。
写真を撮るために、お父さんやお母さんの仕事場を初めて訪問したという方も多かったようです。写真に添えられたコメントを拝見すると、お仕事中のお父さん・お母さんは、家にいる時と少し違って見えて、こんなふうに働いているのだという驚きもあったようですね。笑顔で、そして誰かのために働いている姿を見て「カッコイイ、エライ、ステキ」という感想であふれていました。
毎日元気にお仕事する姿は、家族や先生といった身近な人だけでなく、お医者さん、運転士さん、職人さんや介護施設、農業、スーパーで働く人など、みなさんが接したさまざまな職業の方が写されていました。どうしたらステキに撮れるか? そう考えながら話しかけて笑顔の瞬間や、アングルを工夫した努力も見て取れました。そんなみなさんの写真は、やっぱりすばらしいです。ありがとうございました!