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給与明細の発行は義務?記載する内容や給与の計算方法などを詳しく解説

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給与明細に記す項目は、いずれも従業員にとって大切な情報ばかりであるため、会社は給与明細の目的や内容を正確に把握しなければなりません。

この記事では、会社が給与明細を発行する意味や目的、記載する項目について詳しく解説します。

給与明細とは

給与明細は基本給のほか、通勤手当や各種手当、賃金から天引きされる社会保険料や税金の金額を記載する書類で、賃金の支払日までに会社が従業員に交付します。

給与明細とは支払う賃金の計算根拠を示す書類

給与明細は所得税法第231条において従業員に交付することが義務づけられています。

また所得税法以外においては、交付までは求めていませんが、計算書を作成して控除額を通知する義務(健康保険法第167条、厚生年金法第84条、労働保険徴収法第32条)があります。

つまり賃金を支給さえすれば良いのではなく、「根拠ある数字を通知すること=給与明細を発行すること」までが会社の義務なのです。

給与明細に記載する項目

給与明細の仕様は会社によって少しずつ異なりますが、主に勤怠・支給・控除の3項目に大別されています。

勤怠とは給与計算の根拠となる勤務実態、支給とは基本給や各種手当の金額、控除とは源泉所得税や社会保険料など本人負担分の金額のことです。

これら3つの要素は、いずれも賃金計算には欠かせない要素となります。毎月支払う賃金がどのように計算されたか、従業員に対して根拠を示すためにも、会社は必要な情報を正確に記載した給与明細を作成しなければなりません。

給与明細における勤怠項目とは

給与明細において、計算のベースとなるのが勤怠項目です。タイムカードや出勤簿などからわかる勤務実績を集計したもので、給与明細に記載する数字の算定根拠となります。

勤怠は働いた日数を示す項目

勤怠は、賃金の支払い対象となる期間、従業員がどれだけ勤務したかを記載する項目です。

会社は勤怠項目を記載するために、従業員の勤務状況を正確に把握しておかなければなりません。勤務日数や欠勤日数、残業時間や早退時間、休日出勤の日数や時間、有給休暇の消化日数などの情報を、最低でも1ヶ月ごとに1度は集計します。

月1回集計する理由は労働基準法第24条で「賃金は毎月1回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない」と決められているからです。

給与計算は勤怠項目を基におこなうため、勤怠項目に誤りがあれば、意図せずとも不払いトラブルにつながる可能性があります。たとえばシフト制を導入している会社などの場合、週40時間超分の手当や休日出勤の漏れなどが起こらないように、細心の注意が必要です。

ほかにも、残業時間の集計期間が基本給の算定期間と異なる場合など、同じ月の給与であっても抽出する勤怠データが異なる可能性もあります。誤解が起きる原因となりやすいので、給与明細を確認させる際、いつの分がどの時期に払われるかは従業員に認知させておいた方がよいでしょう。

給与明細における支給項目とは

基本給や各種手当など、従業員に支払う賃金の内訳を示すのが支給項目です。会社により様々な種類の項目がありますが、今回はよくある項目を紹介します。

基本給

基本給は会社の賃金体系のベースとなるものです。

会社によって固定残業代を含む場合がありますが、基本的に基本給には残業時間や休日出勤といった時間外労働による残業代は含まれていません。雇用契約書や賃金の規定を基にした数字を、給与明細に記載します。

割増手当

割増手当とは、雇用契約で約束された時間以外に働いた分と、身体への負担が多いとされている深夜の一定の時間に働いた場合に必要となる手当です。

計算方法は就業規則で規定されており、会社だけでなく、担当する業務や立場によって違うこともあります。

各種手当

手当とは会社が就業規則や雇用契約書などに基づいて独自に支給する賃金で、基本給のみで各種手当がまったくない会社もあります。

また、同じ会社であっても従業員によって個々に事情が異なるため、従業員ごとに支給する手当も異なります。

たとえば、住まいや家族構成によって生じる住宅手当や家族手当は、全員に支給されるものではなく、その条件に該当する従業員に支給されるものです。通勤の際の交通費を支給する通勤手当は、通勤距離や方法が違えば金額も違い、会社によって上限額を設けていたり、独自の計算方法を採用していたりする会社もあります。

そのほかにも出張手当や単身赴任手当などもあります。

これら手当には所得税の課税対象となるものや、保険料の対象となるものなど、手当ごとに法律上のルールがあるため注意が必要です。たとえば所得税の規定枠内であれば、通勤手当は非課税となるため計算に含みませんが、雇用保険料を算出するときには通勤手当も含めた額で計算します。

総支給額

基本給と割増手当、各種手当すべてを合わせた額を総支給額といいます。会社によっては経費立替分を給与明細に記載することもありますが、単に実費を立替えただけで賃金ではないので、基本的には総支給額には含みません。

給与明細における控除項目とは

控除項目では、社会保険料や税金など、会社が支払う賃金から差し引かれる金額が示されます。会社の総支給額から控除額を差し引いた額が、いわゆる手取り給与と呼ばれるものです。

雇用保険

雇用保険は雇用の安定に対する給付や助成金、再就職の支援を目的とした保険です。

会社の規模にかかわらず、1週間の所定労働時間が20時間以上で、31日以上の雇用見込みがある人を雇う場合は雇用保険の加入対象(昼間学生や同居親族等一部例外あり)となります。

雇用保険制度への加入は事業主の義務であり、「総支給額×本人負担分の雇用保険料率」で算出された雇用保険料を毎月控除し、会社が会社負担分と合わせて毎年納付する仕組みです。雇用保険料率は業種によって異なります。

健康保険、介護保険、厚生年金保険

控除項目のひとつに、健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料といった社会保険料があります。

社会保険とは、万が一ケガや病気で働くなったときなどに社会全体で被保険者をカバーする仕組みのことです。保険料は事業主と被保険者、つまり会社と従業員が折半します。また、加入義務は会社の規模や年齢、雇用形態により異なり、保険料率は会社の加入している健保組合により異なります。

当月ベースか次月ベースかで考え方が異なる

社会保険(雇用保険は除く)と住民税には、当月ベースと次月ベースの2種類の考え方があります。

当月ベースは当月分を当月に控除、次月ベースは当月分を翌月に控除します。給与の支給日が翌月払いの会社は次月ベースでおこなうことが多いですが、当月払いで次月ベースという会社の場合、入社月に控除がない分、退社月に2ヶ月分を控除します。

所得税

所得税とは所得金額に応じて納める累進課税の税金です。課税所得に一定の税率をかけ、そこから税額控除を差し引いて導き出します。

所得を得た個人は、本来であれば自分で所得税を納めなければなりません。しかし会社員の場合、会社が源泉徴収することで従業員に代わって毎月の賃金から所得税を納めているため、その金額を給与明細に記載しなければならないのです。

また、毎月の納税額は前年度の情報などから概算で割り出されているため、会社は毎年12月末時点で年末調整をおこない、所得税の過不足を調整することになります。

住民税

住民税とは市町村に納める「市町村民税」と都道府県に納める「都道府県税」のことで、前年度の所得から算出され、毎年1月1日時点の居住地に納税します。

所得に対する所得割と一律に課される均等割をベースに、利子割や配当割、株式等の譲渡所得を合計した金額が納税額となります。

住民税は、年末調整や確定申告の内容をもとに、毎年5月ごろに税務署から会社へ通知されます。6月から翌5月までの12回に分割して会社が従業員の賃金から天引きし、従業員に代わって納税する特別徴収です。給与明細には天引きした金額を記載します。

その他

会社が労使協定にもとづき、独自に定める控除項目が存在することもあります。協定控除と呼ばれるもので、たとえば積立金や財形貯蓄、労働組合費、寮費、食費などが該当します。

給与を計算する手順

給与明細には、基本給をベースとした正しい算定結果を記さなければなりません。そこで、賃金を支払う立場として、会社が理解しておくべき給与計算の手順を解説します。

基本給や各種手当から総支給額を計算する

まず、タイムカードや勤務表といった勤怠データから、賃金の支払い対象となる期間における従業員の労働時間を確認します。

次に雇用契約書に規定されている時間以外に働いた時間があれば、就業規則の規定を確認し、割増手当額を計算します。逆に雇用契約書に規定されている時間に働かなかった時間があれば、就業規則の規定を確認し、基本給からの控除額を計算します。

会社が従業員に支払う総支給額は、基本給(控除分含む)と割増手当、各種手当を加算すれば判明します。手当については、家族構成や住まいなど、従業員の情報を基に計算するので、情報を更新しておくことで、支給漏れなどの発生を防ぎましょう。

控除額を計算し、総支給額から差し引く

総支給額を算出したら、そこから控除額を差し引きます。

控除となるのは雇用保険料、健康保険料、厚生年金保険料、介護保険料といった社会保険料と、会社が従業員に代わって納付する所得税と住民税です。

社会保険料は厚生労働省が毎年更新している標準報酬月額表(独自健康保険組合の場合は独自健康保険の保険料率表)を基に計算します。
注意点は円未満の端数処理が四捨五入ではなく、50銭までは切り捨て、50銭を超える場合は1円に切り上げになる点です。また等級(給与額として登録されている金額の枠)は、毎年4月から6月に支給された給与額を基に、毎年9月分から変更となります。
また基本給など毎月決まった額が大幅に変更(変更前と比べて原則2等級以上の差)となり、3ヶ月以上その状態が続く場合にも等級は変わります。このケースの等級変更は給与の変更があったタイミングと大幅にずれるため、会社が間違えているのでは?と誤解されることがよくあります。

【標準報酬月額表(東京都の例)】令和2年10月納付分〜

等級 報酬月額(以上~未満) 標準報酬月額
1 0~63,000 58,000
2 63,000~73,000 68,000
3 73,000~83,000 78,000
・・・ ・・・ ・・・
48 1,235,000~1,295,000 1,270,000
49 1,295,000~1,355,000 1,330,000
50 1,355,000~ 1,390,000

所得税は、総支給額から非課税の手当を引いた金額を基に、毎年公表される「給与所得の源泉徴収税額表」を用いて計算します。「課税所得金額×税率−税額控除額」によって求めます。

住民税は、年税額を12で割ったときの端数を加える6月分、または徴収初月だけ高いこともありますが、毎月一定の額が控除されます。この額は前年の所得額により毎年変更され、控除金額の通知書が居住地の市区町村より会社経由で個別に発行されています。

賃金台帳と給与明細などを作成し、賃金支払いの手続きをする

差し引き支給額を算出したら、賃金台帳と給与明細を作成し、従業員への賃金支払い手続きを進めます。

ここで作成する賃金台帳とは、従業員の給与明細の内容を記録する帳簿のことです。給与明細は従業員の手にわたりますが、会社は給与明細とは別に賃金を計算する根拠となった資料を保管する必要が生じるため、帳簿として記録しておかなければなりません。

給与明細の作成に関する資料の保管期間は、賃金台帳、タイムカードなどの勤怠データ、労働者名簿が3年、源泉徴収簿、給与所得者の扶養控除等(異動)申告書、給与所得者の保険料控除申告書兼給与所得者の配偶者特別控除申告書が7年となります。

給与明細のWEB化も検討しましょう

給与明細は、単なる数字の羅列ではなく、複数の法律によって決められたルールを基に、個人毎に計算する根拠ある書類です。様々なルールを理解する必要があるだけでなく、個人毎の状況により計算方法も異なるため、従業員数によっては計算に手間や時間がかかり会社に大きな負担となることも多いようです。

そのようなときは給与計算自体をWEB化することで、法改正対応の自動化や、会社独自の一定のルールを登録し、計算の手間を省くことができます。

また会社は給与明細の作成後も、計算の根拠となる資料や、給与明細と同様の内容である賃金台帳を複数年にわたって保管する必要がありますが、WEB化すれば情報の一元管理ができるほか、ペーパーレスによって管理コストや印刷コスト、封入や送付の時間の削減といったメリットが期待できます。

ただし、給与明細のWEB化には所得税法上、従業員の承諾が必要になります。これは所得税法第226条第4項(源泉徴収票)と所得税法第231条第2項(給与等、退職手当等、または公的年金等の支払明細書)に規定されている「支払を受ける者(従業員)の承諾を得れば、電磁的方法により提供ができる」という「原則は紙。しかし本人が承諾すれば電磁的方法(WEB等)でもよい」というルールがあるからです。

そのため承諾をもらう際には、WEB化が従業員にもメリットがあることを伝え、操作方法の説明会や紙の給与明細希望者の事情や人数の把握等、従業員がWEB化を受け入れやすいよう計画的に導入するようにしましょう。

給与明細の項目を把握しておきましょう

給与明細は、所得税法で交付する義務があり、間違いのない内容を記載する必要があります。

実際の給与計算は、専用のシステムでおこなわれることが一般的ですが、その計算の内容についてはしっかり理解しておきしょう。

また、給与明細を作成するときには、計算の根拠となる資料を数年間保管しなければなりません。負担を感じるようなら、WEB化を検討するのもよいでしょう。

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江黒 照美 -えぐろ てるみ-

特定社会保険労務士。 強みを持たせるために得意分野を磨く士業が多い中、あえて真逆のジェネラリストを目指し、専門の労働問題を強化するだけではなく、開業後、年金事務所で年金相談の1000本ノックもこなす。 現在は採用から退職の先の年金まで、専門用語を使わず相談者に寄り添った言葉で説明し、顧問先から個人のお客様まで幅広い層に、高い評価を頂いている。

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