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交通費を会計処理する際に知っておくべきこととは?通勤手当との違いも解説

人事・労務

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会社では、日々の業務に伴い多くの会計処理が発生し、その1つに交通費の精算があります。交通費は、会社の経費として計上するため、会計処理を担当する方は、その定義をしっかりと理解しておく必要があります。

今回は、交通費の定義や会社の支払い義務、精算方法について解説します。また、交通費と混同しがちな通勤手当との違いについても解説していきますので、ぜひ参考にしてください。

会社における交通費とは

会社における交通費とは、営業や出張の際に従業員が移動するために必要とする費用のことを指し、会計科目上では「旅費交通費」または「出張旅費」の勘定項目で処理されるものが該当します。

たとえば、業務上で必要となる下記のような費用は交通費に分類されますので、覚えておきましょう。

  • 鉄道、バスなどの乗車運賃
  • 駐車場の料金
  • 高速道路など有料道路の料金
  • タクシー代
  • 飛行機代

その他、就業規則で定めることによって、出張などに伴う宿泊費や食事代、日当も交通費として扱うことが可能です。

また、交通費は、従業員が会社に通勤するための交通費、いわゆる通勤手当と混同しがちですが、交通費と通勤手当では定義が異なります。交通費と通勤手当の違いについては、後ほど解説していきます。

交通費の支払い義務はある?

交通費の支払いに対する会社の義務については、法律上で明記されていません。しかしながら、交通費について就業規則に記載されている場合は、会社が負担する必要があります。

「就業規則で交通費について記載しなければ、支払わなくてよいのか?」という疑問が生じますが、就業規則に記載する事項については労働基準法89条で定められており、会社は労働基準法89条を遵守したうえで就業規則を作成し、労働基準監督署への届け出をおこなう必要があります。

労働基準法89条には、「労働者に食費、作業用品その他の負担をさせる定めをする場合においては、これに関する事項」という一節があり、交通費は「その他の負担」に含まれると考えられるので、就業規則で交通費に関する規定を設けていない場合は、そのこと自体が労働基準法に違反する可能性があります。

つまり、交通費の支払いについて明記された法律はないものの、就業規則には交通費についての記載をおこなう必要があるため、会社は交通費を支払う義務があるということになります。

交通費の精算方法

交通費の精算は実費でおこなうため、原則、交通費を受け取った従業員の所得税は全額非課税となります。ただし、常識の範囲を逸脱した高額なものについては、非課税として認められない可能性があります。

精算期日(締め日)については、会社の就業規則や社内規定によって異なり、都度精算とする会社もあれば、毎月15日など決まった日を設けて、1ヶ月単位でまとめて精算する会社もあります。

また、交通費は会社の経費として処理するので、年度をまたいでの精算は会計担当者に大きな負担となってしまいます。そのため、就業規則や社内規定には、交通費の精算期日を明記し、全従業員に周知させることが重要になります。

交通費の請求期日を守らず、何度も申告が遅れる従業員に対しては、注意や指導をおこない、請求期日を守ってもらう環境を整えましょう。

ちなみに、従業員側から見た場合の交通費の請求権は、時効が5年となっています。そのため、会社側は就業規則や社内規定で定めた期日を超えてからの請求であっても、時効となっていない交通費に関しては支払いに応じる必要があります。

交通費と通勤手当の違いは?

通勤手当とは、従業員が自宅から会社までの通勤にかかる交通費のことを指します。会社における交通費とは違い、通勤手当は福利厚生としての位置づけとなるため、就業規則に必ず定める必要がなく、会社は支払いの義務がありません。

とはいえ、多くの会社では福利厚生として通勤手当を支給しており、会社によっては自転車通勤の際にかかる駐輪場の料金を通勤手当として支給しているケースもあります。

通勤手当の非課税対象金額には上限がある

交通費を受け取った従業員の所得税は原則、全額非課税となるのに対して、通勤手当は非課税となる上限金額が1ヶ月150,000円までと定められています。その他、車通勤の場合は距離に応じて下記のように上限金額が定められているので、確認しておきましょう。

片道の通勤距離 1ヶ月あたりの上限金額
2km未満 全額課税
2km以上10km未満 4,200円
10km以上15km未満 7,100円
15km以上25km未満 12,900円
25km以上35km未満 18,700円
35km以上45km未満 24,400円
45km以上55km未満 28,000円
55km以上 31,600円

参考:国税庁(マイカー・自転車通勤者の通勤手当)

通勤にかかる費用の支給方法

通勤手当の支給方法には、主に下記の3つがあります。

  • 全額支給:通勤にかかる費用すべてを支給
  • 一部支給:1日や1ヶ月単位の上限金額を定めて支給
  • 一律支給:日ごとや月ごとに決まった金額を一律で支給

通勤手当は福利厚生の1つになるため、そもそも会社に支払いの義務はなく、支給金額については会社が任意で決定することができます。そのため、通勤手当を全額支給ではなく一部支給したり、距離に関係なく一律で支給したりする会社もあります。

ただし、通勤手当を支給する場合は、交通費と同様に就業規則や社内規定で、通勤手当を支給する旨と支給の条件を明記しておく必要があるので、覚えておきましょう。

従業員が自家用車で通勤する場合】

会社によって異なりますが、車で通勤する従業員については、自宅と会社の距離をもとに、ガゾリン単価や車の燃費を勘案して計算するケースが多いです。

たとえば、1kmあたり10円として、自宅と会社間が往復で20km(片道10㎞)の場合、1日あたりの通勤手当は「10円×20 km=200円」となり、月単位(20日出勤の場合)だと「200円(1日あたりの金額)×20日=4,000円」という計算になります。

交通費の会計処理で覚えておきたい注意点

ここでは、通勤手当(通勤のための交通費)を含め、交通費の会計処理で覚えておきたいことや注意点について紹介します。

通勤定期の区間と営業活動での移動区間が重なっている場合

通勤手当として、自宅から会社までの定期券の金額を支給されている従業員の場合、近場での営業では移動区間と定期券の区間が重なるケースがあります。

このような場合、従業員は営業活動の移動の一部に定期券を利用することが可能ですので、交通費は、定期券の区間と重なっている部分を除いた金額を精算するのが一般的です。

定期券の有無を確認せずに交通費を精算してしまうと、重なっている区間の交通費を会社が余計に負担することになるので、通勤手当として定期券の金額を支給している会社は、従業員が正確な交通費を申告しているのかをチェックする必要があります。

また、こうした特殊なケースの交通費の精算についても、就業規則や社内規定であらかじめ決めておくことで、従業員への周知と後々のトラブル防止につながります。

通勤のための費用の不正受給に注意

通勤手当を従業員の申請制にしている場合は、従業員が虚偽の申請をおこない、通勤手当を不正に受給しているケースがあるため、注意が必要です。たとえば、通勤手当の不正受給としては、下記のようなケースが該当します。

  • 車(バスや電車)での通勤を申請しているにもかかわらず、実際は自転車や徒歩で通勤している
  • 実際は会社に届出した住所より近くに住んでいる
  • 引っ越ししているにもかかわらず、報告していない

このように、虚偽の申告によって通勤手当を不正に受給している従業員に対しては、事実確認が取れた後に返還請求をおこなうことが可能です。

交通費の定義を理解して業務に役立てましょう

会社における交通費は、営業や出張の際に従業員が移動するために必要とする費用のことを指します。会社は、交通費について就業規則に記載する義務があり、従業員から請求があった場合は精算しなければいけません。

また、交通費は会社の経費として計上されるため、年度内での精算が好ましいです。そのため、就業規則には、交通費の精算期日についても明記し、従業員が精算期日を守れる環境を整えるようにしましょう。

【参考文献】

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宮川 真一 -みやがわ しんいち-

岐阜県大垣市出身。1996年一橋大学商学部卒業、1997年から税理士業務に従事し、税理士としてのキャリアは20年以上。 現在は、税理士法人みらいサクセスパートナーズの代表として、M&Aや事業承継のコンサルティング、税務対応をおこなう。あわせて、CFP®(ファイナンシャルプランナー)の資格を生かした個人様向けのコンサルティングもおこなう。また、事業会社の財務経理を担当し、会計・税務を軸にいくつかの会社の取締役・監査役にも従事している。

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