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メンター制度とは?メリットや導入方法、「OJT」や「コーチング」との違いについて解説

育成ノウハウ

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少子高齢化による労働人口の減少により、現在、若手社員の確保は企業にとって大きな課題となっています。そんな中、企業の人材育成において「メンター制度」が大きな注目を集めています。

メンター制度は、先輩社員が新入社員をサポートし、成長促進や早期の離職を防ぐことを目的に導入される制度です。この記事では、メンター制度のメリットや導入方法、メンター制度と似た育成方法である「OJT」や「コーチング」との違いなどについて解説していきます。

メンター制度とは

メンター制度とは、経験の浅い新入社員や若手社員に対して、豊富な知識と実務経験のある「他部署」や「年齢の近い」先輩社員がサポートをおこなう制度のことを指します。仕事にまつわる悩みの解消やキャリア開発など、幅広いサポートをおこなうことで個人の成長を支援します。

メンターの語源

英語で「助言者」や「相談相手」を意味するメンターという言葉は、古代ギリシャの叙事詩「オデュッセイア」に登場するメントール(Mentor)という人物の名前に由来します。

メントールは、オデュッセウス王の親友としてよき助言者を務めながら、王の息子であるテーレマコスの教育者としての役割も果たしました。

メンターとメンティとは

メンター制度では、指導する経験豊かな先輩社員のことを「メンター」と呼び、メンターから指導を受ける新入社員のことを「メンティ」と呼びます。また、メンターがメンティに対しておこなう指導法のことを「メンタリング」といいます。

メンティは、おもに新卒や20代の若手社員が対象となります。一方のメンターは、以下の2つの基準に沿って選ばれます。

  • 年齢の近い先輩社員
  • 業務上の接点が少ない他部署の社員

メンティが本音で仕事の悩みを伝えられるように、メンターはメンティと年齢が近く、直接的な利害関係のない他部署の先輩社員の中から選ばれるのが一般的です。

メンター制度の目的

メンター制度の最大の目的は、若手社員の成長促進と離職防止です。メンターはメンティが抱える仕事上の悩みや課題の解決をサポートし、メンティの成長と定着率アップを目指します。

また、メンター制度には社内のコミュニケーションを活性化させる目的もあります。社員同士の信頼関係を築き、愛社精神を向上させるためにメンター制度を導入する企業が多く見られるようになりました。

メンターの役割

メンターには、主に次のような役割があります。

  • 個別指導によるメンティのモチベーション向上
  • メンティの自律的なキャリア開発意識の醸成
  • メンティの性格に合わせた指導とサポート

上記の役割の内容を、順番に見ていきましょう。

個別指導によるメンティのモチベーション向上

メンター制度は、1対1の個別指導が原則です。マンツーマンで指導することによって、メンティが抱える悩みや課題に対し、きめ細やかにサポートすることができます。

メンターはメンティの相談を真摯に聞き、どうしたらメンティの悩みが解決し、仕事に対するモチベーションが向上するのかを考える必要があります。

メンティの自律的なキャリア開発意識の醸成

メンティに「将来のキャリア目標」を設定させ、目標達成のためにはどのようなプランが必要なのかを考えさせるのもメンターの役割です。

メンターはメンティが考えた目標やプランの内容をチェックし、必要に応じてアドバイスをおこないます。

メンティの性格に合わせた指導とサポート

メンティの性格は様々です。メンターは、自分が担当するメンティの性格に合わせたメンタリングをおこなう必要があります。

適切なメンタリングをおこなうためにも、指導する前に一度面談をして、メンティがどのような性格なのか理解した上で指導法を考えるのがメンタリングの原則となっています。

OJT、コーチングとの違いとは

先輩社員が若手社員をサポートする人材育成の手法は、メンター制度以外にも「OJT」や「コーチング」もあげられます。以下では、OJT、コーチングとメンター制度の違いについて解説します。

OJTとの違い

OJT(On the Job Training)は、仕事の知識やノウハウを実務を通じて教育する人材育成方法です。業務上の接点が少ない他部署の社員が指導するメンター制度に対し、OJTでは直属の上司や先輩社員が指導役を務めるのが一般的です。

また、メンター制度とOJTはその目的も異なります。メンター制度では仕事に関する悩み・課題解決のサポートをおこなうことで、モチベーションの向上や職場環境への適応、離職率の低下などを目的とすることに対し、OJTは必要な知識や技能を効率的に教えることで新人を早期戦力化することを目的としています。

コーチングとの違い

コーチングは、1対1の対話を通じて新人の目標達成を支援するという点で、メンター制度と似た人材育成方法です。ただし、コーチングは業務達成やプロジェクトの実現など仕事に関わる限定的な領域をテーマとします。

これに対しメンター制度は、仕事に限らずプライベートにおける相談など、メンタル面のサポートを含めた広いテーマを対象とします。コーチングが業務上の具体的な目標達成のためにおこなわれるのに対して、メンタリングでは精神面も含めて会社で働く上での悩み全般をサポートします。

メンター制度を導入するメリット

企業がメンター制度を導入することで得られるメリットとしては、おもに以下の点が挙げられます。

  • メンティのモチベーションが上がり会社に対する帰属意識が高まる
  • メンティの定着率が向上する
  • 部署を横断したコミュニケーションが活性化する
  • メンターの責任感や人材育成に対する意識が向上する

メンター制度の最大のメリットは、メンティが抱える仕事上の課題や悩みを解決することにより、メンティのモチベーションと定着率が向上することです。OJTやコーチングがあくまで業務上の目標達成のためにおこなわれるのに対して、メンター制度は新人の心のケアまでできる点が優れています。

また、指導を受けるメンティだけではなく、指導をするメンターの成長のきっかけとなる点もこの制度の特長です。メンターはメンティの指導を通じて、社員としての責任感や人材育成意識を向上させることができます。

メンター制度の導入手順

ここからは、実際にメンター制度を導入する際の手順についてご紹介します。メンター制度の導入手順は、以下のような流れになります。

  1. 目的の設定
  2. 運用ルールの決定
  3. メンター・メンティの選出
  4. メンター・メンティのマッチング
  5. 研修の実施
  6. メンタリングの実施

上記の導入手順をひとつずつ解説していきます。

1.目的の設定

まず、メンター制度を導入する目的を明確に設定しましょう。先述した新人育成の他にも、企業文化の継承や女性社員の活躍推進など、企業のニーズに合わせてさまざまな目標を設定することが可能です。

メンタリングの目的には、以下の点が挙げられます。

①新入社員の定着率向上
②社内コミュニケーションの活性化
③企業文化の継承
④幹部候補の育成
⑤女性社員の活躍推進

このように具体的な目的を設定した上で、以降のプロセスを決めていくのがメンター制度を導入する際の原則です。

2.運用ルールの決定

目的の設定が完了したら、次は基本的な運用ルールを決定します。実際にメンタリングが始まってからトラブルが生じることがないように、事前に最低限守るべきルールを定めておくことが大切です。

具体的な運用ルールには次のようなものが挙げられます。

  • メンタリングの守秘義務を守る
  • メンタリングの実施期間を定める
  • メンタリングの実施日・所要時間を定める
  • メンタリング中にトラブルが発生した場合に備えて相談窓口を設けておく
  • メンタリングは原則として就業時間内におこなう

このような運用ルールを事前に決めておくことで、メンターとメンティの認識のずれがなくなり、メンタリングをスムーズに進めることができます。

3.メンターとメンティの選出

たとえば、メンター制度導入の目的が「新入社員のモチベーション向上」の場合、メンターの性格や価値観、キャリア志向を考慮した上で、適切な社員をメンティとして選出します。

このように、メンターとメンティの選出は、最初に設定した目的に沿っておこなわれます。

4.メンターとメンティのマッチング

メンターとメンティの選出が終わったら、次は両者のマッチングをおこないます。マッチングは、以下の点を考慮しておこなうことが重要です。

  • メンティの将来的なキャリア目標にメンターの経歴が合っているか
  • 気軽に話し合える(業務上の接点が少ない)関係か
  • メンティの能力や特性を伸ばすことができるメンターか

以上のポイントを踏まえた上で、メンターとメンティのマッチングをおこなうと、人選ミスが起こる可能性を少なくすることができます。

5.研修の実施

マッチングが完了したら、次はメンターとメンティに対して研修をおこないます。この研修は、以下の3点を目的としています。

①メンター制度の意義や目的を説明し、誤解や不安を解消すること
②有意義なメンタリングとするために必要な知識を覚えさせること
③メンタリング中にトラブルが発生した場合の対処法を教えること

事前に研修をおこない、これらをレクチャーすることで、メンターとメンティ双方にとって充実したメンタリングがおこなえるようになります。

6.メンタリングの実施

事前研修が終了したら、いよいよメンタリングの実施となります。

メンタリングの進め方については、基本的には当事者同士の判断に委ねられます。ただし、実施当初はお互いに慣れていない可能性があるため、メンタリングを推進する部署がガイドラインを示して先導してあげる必要があります。

また、定期的にメンターとメンティに報告書を提出してもらい、その内容をもとにメンタリングを推進する部署が両者をサポートしていくことで、その後のメンタリングをさらに有意義なものにしていくことができます。

メンター制度は企業の業績向上を下支えする

メンター制度は、新入社員の成長促進と定着率アップにつながるだけでなく、指導する側の社員にとっても成長のきっかけとなる優れた制度です。また、部署を超えたコミュニケーションの活発化や愛社精神の向上などのメリットもあります。

ただし、メンタリングを効果的なものにするためには、目的設定や運用ルールの策定、事前研修の実施など、前もってしっかりと準備をしてから実施する必要があります。紹介した導入手順を参考にして、自社に合ったメンター制度を導入してみてください。

【参考文献】

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