人事担当の方は、社員が忌引き休暇の取得申請をおこなう際、問い合わせを受けることがあるかもしれませんが、そもそも忌引き休暇とはどのような制度なのでしょうか。忌引きの申請は、いつどのタイミングで申請がくるか予測ができないため、事前に確認事項を頭に入れておくことが重要です。この記事では忌引き休暇の考え方、休暇日数、社員からの申請に対する対応などについて解説します。
忌引き休暇とは?
忌引き休暇とは、社員の親族が亡くなった際に、葬儀や通夜に社員が出席するために取得する休暇のことを指します。多くの会社で『忌引き休暇制度』を導入していますが、ルールは各社で異なります。
また、社員本人との続柄が何親等かによっても休暇日数が変わり、親等数が小さくなるほど休暇日数が長くなるのが一般的です。
雇用形態によっても変わる忌引き休暇
社員の忌引き休暇の取得日数については、労働基準法で具体的には決まっていないため、各社が就業規則で日数などを定める必要があります。
また、正社員、契約社員、アルバイト、パートなど、雇用形態によってもそれぞれのルールを決める必要があります。
忌引き休暇は有給扱い?賃金は発生する?
忌引き休暇を有給扱いとするかどうかは各社の就業規則によって異なります。忌引き休暇の対応について、一般的には次のようなケースがあります。
① 通常出勤と同様に扱い賃金を支払う
② 通常出勤と同様に扱うが、賃金は支払わない
③ 欠勤扱いとするが、有給休暇の取得を可能とする
なお、忌引き休暇中の賃金が支払われない会社は、社員は有給休暇を取得する方法もあります。
また、忌引き休暇制度がない会社で葬儀などに出席する申請があった場合、社員は有給休暇を取得するか欠勤(無給)のどちらかになります。
民間企業の9割以上は「忌引(慶弔)休暇制度」がある
では、実際にはどのくらいの会社が「忌引(慶弔)休暇制度」を設けているのでしょうか。
2018年に厚生労働省所管の独立法人である労働政策研究・研修機構から発表された調査結果(※)によると、忌引(慶弔)休暇制度がある会社は90.7%と、ほとんどの会社が忌引(慶弔)休暇制度を設けているという結果が出ています。また忌引(慶弔)休暇のみならず60%以上の会社で「慶弔見舞金制度」や「病気休職制度」など福利厚生施策が整っているという結果も出ています。
(※)独立行政法人 労働政策研究・研修機構「企業における福利厚生施策の実態に関する調査」
忌引き休暇の日数と適用範囲
続いて、忌引き休暇の日数と、適用される対象の範囲についてみていきましょう。一般的には、親族が亡くなった日またはその翌日から起算して、以下の日数を忌引き休暇として扱うことが多いようです。
忌引き休暇の日数と適用範囲の一般的な例
・配偶者:10日間
・父母:7日間
・子:5日間
・祖父母:3日間
・兄弟(姉妹):3日間
・おじ(おば):1日間
・孫:1日間
また、忌引き休暇が土日や祝日といった公休と重なった場合は、公休も忌引き休暇に含めて数えることが多いとされています。
例えば、週末に親族が亡くなり、忌引き休暇の取得期間がすべて公休と重なった場合は、「忌引きでの休暇はなくなる」ということになります。
【人事担当は知っておきたい】社員の忌引きへの対応|申請やメールの対応
ここからは、社員から忌引き休暇の申請を受けた場合の対応について解説します。申請内容の確認点、香典やメールの返信方法などを説明します。
社員に確認するべきポイント
社員から忌引き休暇の申請を受けたら、以下を確認するようにしましょう。
・忌引き期間
・亡くなった方の続柄
・亡くなった日時
・葬儀の詳細や葬儀形式
・忌引き休暇中の連絡先
亡くなった方との続柄により休暇日数が異なるため、就業規則を確認の上、忌引き休暇が適用される期間を確認します。葬儀が遠方で行われるなどの理由により、忌引きの期間を超えて休暇を取る場合は、有給休暇で対応することも考えられるでしょう。
場合によっては証明書の確認も必要
会社員の忌引き休暇取得では、個人の良識に任され証明書は不要な場合が多いものの、公務員が忌引き休暇を取得する場合は、証明書が必要になる場合もあります。以下のような書類が証明書となります。
【死亡診断書】
死亡診断書は、法的・医学的に人の死亡を証明する書類です。確かな医学的知見に基づく証明が必要とされ、医師だけがこの証明書を記入できます。故人が入院していた場合は、担当医師が発行します。
【火葬許可証】
火葬許可証は、亡くなった人の遺体を火葬する許可を証明のための書類です。こちらは市区町村役場に死亡届と火葬許可申請書を提出した際に発行されるものです。
【会葬礼状】
会葬礼状は、葬儀の参列者に対し、お礼の気持ちを伝えるものです。葬儀の受け付け時や香典返しなどの返礼品と一緒に渡されます。
【訃報】
訃報とは人の死を知らせるもの、連絡のこといいます。新聞や地域の回覧板などで通知される場合もありますが、主に電話やメールで連絡されます。
香典
忌引き休暇の取得だけではなく、慶弔金を定めている会社もありますので合わせて確認が必要です。
香典は会社(または組織や団体)から経費として計上され、社員へ送る香典・供花は、本人と故人との関係により金額が定められています。
金額は会社によりますが、配偶者が亡くなった場合は5万円、他の同居親族の場合は2万円、別居している配偶者の父母の場合は1万円が相場になっています。
メールの対応について
人事担当者が忌引き申請のメールを受信した際に確認するべき事項があります。忌引きのメールは申請書類の提出前に受信することが多く、メールで必要な情報を人事担当者が事前確認できれば、申請書類との照合にも役立ちます。
社員からのメールで確認する事項
まず社員の忌引き休暇申請に、「忌引きの期間」「亡くなった方の続柄」「亡くなった日時」「葬儀の詳細や葬儀形式」「忌引き休暇中の連絡先」が明記されているかを確認しましょう。その後の手続きに必要情報が不足している場合は、先に確認をしておくと良いでしょう。
忌引きによる引継ぎや取引先への連絡
社員が忌引き休暇を取得する際に、社員の業務の引継ぎや取引先への連絡が不足していないか確認が必要です。
既にアポイントがあった場合には再設定や代理人を検討するなど、取引先に連絡を入れておきましょう。
忌引き休暇への対応は事前確認が重要
忌引き休暇の一般的な考え方や休暇日数、社員からの申請に対する対応について解説してきました。忌引き休暇の申請はいつどのタイミングでくるか予測ができません。いざという時のために、社員からの忌引き休暇の申請への対応は理解しておきましょう。
【参考文献】