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エンパワーメントとは?権限委譲を成功させるためのポイントを解説

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エンパワーメントとは、個人が持っている力を最大限引き出すために、上司が部下に権限を委譲することをいいます。権限を委譲された部下は、課題解決のために自ら考えて判断・行動するようになるため、パフォーマンスが向上し、生産性も上がるというメリットがあります。

近年はさまざまな雇用形態が増え、組織もますます多様化してきています。そのような環境のなか、会社が生き残っていくためには、社員が持っている力を最大限に引き出して組織全体のパフォーマンスを上げていくことが重要です。エンパワーメントはこの「社員や組織のパフォーマンスを上げる」という課題に対する効果的な手法として、注目を集めています。

この記事では、エンパワーメントの意味やメリット・デメリット、組織運営に取り入れるポイントについて詳しく解説していきます。

エンパワーメントとは?

エンパワーメントとは英語で「empowerment」と書き、日本語では「権限委譲」や「能力開花」と訳されます。このエンパワーメントという言葉は、20世紀にアメリカで起こった女性権利獲得運動のなかで使われはじめたもので、当時は「一人ひとりの重要性を認め、発展や改革のために必要な力をつけること」という意味で盛んに用いられました。

最近注目されているビジネスの場でのエンパワーメントとは、部下に一定の権限をあたえて自発的な行動を促し、個々の能力を最大限に引き出して仕事のパフォーマンスを上げることをいいます。

エンパワーメントの基本となる考え方は、人間は生まれながらにして素晴らしい能力や才能をもっており、裁量権を与えて自ら考え行動する機会を与えることで、その内なる力を引き出すことができるというものです。個々の力を今まで以上に引き出すことができれば、組織としてのパフォーマンスも上がり、その結果会社全体の生産性を高めていくことができます。

また、エンパワーメントは権限を委譲するだけではなく、部下が自分で積極的に判断して行動に移せるような環境づくりそのものを指す場合もあります。権限を委譲しても失敗を責められたり、責任を負わされたりするような環境では社員が萎縮し、自発的な考えや行動が損なわれてしまうことがあります。エンパワーメントで高い効果を得るためには、権限の委譲だけではなく環境づくりも重要です。

エンパワーメントが注目されている理由

時代の変化と共に、組織の多様化が進む昨今では、エンパワーメントによる組織のパフォーマンス向上や生産性の向上が強く求められています。それでは、エンパワーメントが注目を集めている理由を具体的に3つみていきましょう。

経営判断のスピードアップが求められている

グローバル化やAIなどの技術革新が進む現代社会においては、ビジネス環境も急激に変化し、より早い経営判断が求められています。
常に迅速な決断や行動が求められる現代のビジネス環境においては、これまでのように上司に順番に決裁を求める手法では、ひとつの意思決定に多くの時間を要し、素早い判断をすることが困難です。このような構造のままでは、意思決定の遅れからビジネス環境の変化に適応できずに、生き残り競争から脱落してしまうこともあるでしょう。

また、決定した経営判断をスピード感をもって遂行するためには現場の状況に応じた細かな対応力も必要です。現場に日々向かい合っている社員に権限を委譲することで、現場に即した最適な判断を素早くおこなうことができるようになります。

自ら考え判断ができる次世代リーダーの育成が急務

人材は組織の要であり、自ら判断して行動できる人は会社にとって必要な人材です。 なかでも、主体的・自律的に行動し組織をけん引していく次世代リーダーの育成は、あらゆる会社にとっても急務といえるでしょう。

権限委譲することにより、部下にとっても自発的に考えて行動する機会が増え、成功や失敗体験を通してリーダーに必要な経験・スキルを積むことができます。
また、エンパワーメントは、年齢や序列に関係なく、優秀な若手や中途採用社員にも権限を与えることができるため、若手社員の活躍する場が増え、会社のパフォーマンスをより向上させてくれる次世代リーダーを早期に育成することができます。

このように、リーダーとしての能力を身につける環境を整えるためにも、エンパワーメントは効果が高い方法であるということができます。

優秀な中途採用社員が成果を上げやすい環境づくり

昨今は優秀な人材を確保するために、積極的に中途採用をおこなう会社も増えています。しかし、能力よりも年齢や在籍年数が重視されるような組織の場合、中途採用者は本来の能力を発揮できず、期待した評価がされないこともあり得ます。

権限を委譲することで「優秀な人材は年齢や序列に関わらず評価され、仕事を任せてもらえる」という意識を組織全体に浸透させることができれば、中途採用社員が働きやすい環境を作り出すことができます。

エンパワーメントの4つのメリット

エンパワーメントは個人の力を最大限に引き出し、組織を活性化できるため、会社にとってさまざまなメリットがあります。エンパワーメントのメリットを具体的にみていきましょう。

生産性が向上する

組織としての重要な判断はマネージャーやリーダーが下すべきですが、内容によっては現場に近い部下に判断を任せた方がよい場合もあります。部下に権限が委譲されていれば、現場の状況に合わせて素早く意思決定を行い、行動に移すことができます。

社員が自発的に考えて行動ができるようになる

権限が委譲されると、上司からの指示を待つことがなくなり、自発的に判断して行動することが求められるようになります。その結果、社員は日ごろから常に物事を能動的に考え、当事者意識を持って積極的に仕事に取り組めるようになります。

問題解決にあたり、何を行い、どのように改善すべきかを自発的に考えるようになるため、リーダーとしての考え方や仕事への取り組み方も自然と身につくようになります。

部下に権限を委譲して自ら判断する機会を増やすことで、経営者の方針に沿った判断を的確におこなえるようになるなど、管理者に必要な要素を短期間で実践的に身につけることができます。

やりがいや達成感が生まれ、社員の仕事に対する責任感が強くなる

権限が委譲されると、「受動的な仕事」から「能動的な仕事」へと変化するため、自然と責任感が生まれ、モチベーションも高くなります。権限委譲された当初は、戸惑うこともあるかもしれません。

しかし、いったん「自分で考えて行動し、結果を出した」という成功体験を得ると自信がつき、ますます積極的に仕事に取り組めるようになり、組織のパフォーマンス向上にもつながる効果があります。

また、目標達成や問題解決する経験から得られる充実感も、今までより大きなものとなり、仕事に対する満足度も高くなります。その結果、離職率を低く抑え、優秀な人材の流出を防ぎやすくなるというメリットもあります。

アイデアや提案が増えて議論が活発になる

エンパワーメントにより「自ら考え、行動する」という働き方をするようになると、「問題点はどこか」「さらに良くする方法はないか」と自発的に考えるようになります。その結果、問題点の発見やアイデアの提案が増え、議論が活発になるという効果があります。

エンパワーメントにより個々が積極的に仕事に取組むようになると、自然と社員が同じ目標達成のために努力するようになります。その結果、社員同士の垣根や壁が低くなり、団結力も高まるといったメリットもあります。

エンパワーメントのデメリット

エンパワーメントには多くのメリットがありますが、いくつかのデメリットもあります。デメリットをよく理解しておかないと社員への負担が大きくなり、逆効果になってしまうこともあるので注意しましょう。

エンパワーメントが社員の負担になることがある

エンパワーメントでは上司から部下へ権限を与えるため、部下は与えられた裁量の中で自由に判断し、行動できるようになります。しかし、権限の委譲を「責任の増加」と考えてしまい、強いストレスを感じる人もいるため注意が必要です。

ストレスの感じやすさには人それぞれ違いがありますし、もともと自分で決めて行動することが苦手な人もいます。

社員の能力以上の権限を委譲してしまった場合、それが大きなプレッシャーとなってストレスが増大し、かえって、生産性の低下を招く恐れもあります。権限を委譲する際には、社員一人ひとりの能力や特性を考慮した上で、裁量を与えることが重要です。

環境が整っていないと効果が出にくい

エンパワーメントの効果を最大限にするためには、権限を委譲された部下が仕事に前向きに取り組める環境が必要です。エンパワーメント導入から間もないうちは想定外のミスをする部下が出てくる可能性もありますが、その失敗を責めない姿勢が大切です。部下は慣れない環境の中、試行錯誤しながら頑張っています。失敗した場合も厳しく罰するのではなく、改善案を提案したり話し合ったりして、優しくフォローしましょう。

エンパワーメントを成功させるためには、日ごろからチャレンジを評価する雰囲気づくりをおこない、新しい考え方や取り組みを上司が積極的に評価するといった姿勢が大切です。権限を委譲された部下が、目標に向かって積極的にチャレンジできるような環境づくりを上司が率先しておこなうようにしましょう。

エンパワーメントを成功させる5つのコツ

権限を委譲する際は、気を付けるべきポイントやコツを意識することで、より高い効果が期待できます。どのような点に意識して権限の委譲を進めればいいのか、詳しく見ていきましょう。

目標を設定する

最初に「エンパワーメントを推進していく」ということを宣言します。そして、対象の社員の能力よりも少し高い目標(ストレッチゴール)を設定しましょう。目標を設定することで、向かうべき方向性が明確になり、目標達成のための課題や解決策なども考えやすくなります。

また、権限を委譲する範囲を明確にしておくことも大切です。自分に与えられた権限がはっきりとわかっていると部下も仕事に取り組みやすくなります。逆に、すべて自由にやってよいと丸投げしてしまうと失敗したときの損失が大きくなり、会社へのダメージが大きくなることもあるので注意が必要です。

社員の能力や周りの状況を考え、的確な範囲の権限委譲をおこなうようにしましょう。

部下の意見を尊重し失敗を責めない

権限を委譲して判断を任せたとしても、ついつい口を出したくなることがあるかもしれません。しかし、上司は部下を信頼して見守る役割に徹し、細かいところは口を出さないことが大切です。たとえ時間がかかったとしても部下の判断を待ち、自分で判断して行動するように後押ししましょう。

このようなプロセスを繰り返すことで、意思決定能力や柔軟な判断力が培われていきます。

会社のビジョンや目的を共有し、方向のずれを防ぐ

権限を委譲した仕事が会社の中でどのような位置づけなのかを部下に説明し、会社のビジョンや目的を共有することも大切です。

仕事の目的がはっきりしないまま権限だけを委譲した場合、考えや判断のベースとなる情報が少なくなるため、的確な判断ができずにパフォーマンスが上がらないことがあります。

部下が良い判断をおこなったり行動したりするためにも、会社として考えている最終的な目標や仕事の位置づけをしっかりと説明して共有するようにしましょう。

社員の個性に合わせた権限を委譲する

権限を委譲するときには「誰に、どのような権限を委譲するのか」ということがとても大切です。個々の強みに合わせた権限を委譲することで良い判断や行動を引き出すことができ、その結果成功につながりやすいというメリットがあります。

人は、成功体験を得るとますます積極的に行動しようと考えるようになり、さまざまな課題に対してもより前向きに取り組もうとするようになります。権限を委譲するときには、部下が成長しやすいような分野を選ぶようにしましょう。

OODAループ導入によりエンパワーメントに適した環境をととのえる

権限を委譲する際には同時にOODAループという理論を導入することも効果的です。OODAループとは「ウーダ・ループ」と読み、「Observe(観察)」「Orient(方向付け)」「Decide(意思決定)」「Act(行動)」の4つの頭文字をとった造語です。

これはアメリカ空軍の大佐が提唱した意思決定の理論で「瞬時に判断して実行できる思考法」といわれています。そのため、素早い判断と実行力を身につけることができるエンパワーメントと密接に関係する理論として注目されているのです。

OODAループは夢やビジョンの実現に向けて手順よりも結果が出ることに重きを置き、集中して行動するための理論です。それに対してビジネスの場でよく提唱される「PCDAサイクル」は主に品質改善の手法であり、継続的な改善のための手順が重要になります。これらのことを考えると、エンパワーメントに合った理論は、PDCAサイクルではなくOODAループであると判断することができます。

OODAループは目的達成のための行動理論のため、手順は固定ではなく、ときには従来の手順を飛ばすような柔軟な判断も求められます。また、想定外のことが起きるビジネスの現場において、問題を未然に発見して対処したり、トラブルが起きてもすぐに軌道修正するなど対処する判断力や行動力も求められます。状況に応じて素早く、柔軟に対応するための意思決定理論がOODAループなのです。

権限を委譲する際に「OODAループ」を同時に取り入れると、判断や行動の速度がより上がるような環境を作り出すことができるため、エンパワーメントの効果をより大きくすることができます。エンパワーメントで社員の力をより引き出し、パフォーマンスを高めるためにも、この「OODAループ」の意思決定論を導入するとよいでしょう。

エンパワーメントが失敗する原因

エンパワーメントは、社員や会社のパフォーマンス向上に効果的です。しかし、場合によってはエンパワーメントが失敗することもあります。

エンパワーメントをうまく組織の活性化に生かすためには、権限を委譲された社員が萎縮せず、前向きに仕事に取り組める環境づくりも重視する必要があります。それでは、権限の委譲が失敗したときに考えられる原因について、詳しく見ていきましょう。

権限だけでなく責任も丸投げで委譲した

エンパワーメントは上司から部下に権限を委譲することですが、「権限と同等の責任を取らなければならない」となると、リスクを恐れたり萎縮してしまい自発的な行動が妨げらるなど、積極的に仕事に取り組めなくなる可能性があります。

部下がエンパワーメントを前向きにとらえ、結果を出すために自発的に行動するためには「責任は上司が持つ」という姿勢が大切です。権限を委譲した上司が部下の仕事ぶりを見守り、何かあったら責任をとるという姿勢を見せることで、部下もリスクを恐れず積極的に仕事に取り組むことができます。

エンパワーメントを成功させるためには「権限の委譲は、責任の委譲ではない」ということを上司がよく理解し、部下にもそれをしっかりと伝えることが大切です。

報告・連絡・相談がおろそかになる

上司の権限を部下に委譲した場合も、部下は上司に「何をどのように決定したか」を報告する必要があります。部下に一定の権限を与えていても責任を取るのは上司であり、全体業務の把握ができていないと支障をきたすこともあります。

上司は権限を委譲した部下の意思決定を見守りつつ、全体像をしっかりと把握しておくことが必要です。権限を委譲するときに、「報告・連絡・相談」は怠ってはいけないことを部下にきちんと伝えるようにしましょう。

エンパワーメントは組織の発展に大いに役立つ

権限を委譲すると、社員の能力を最大限引き出すことができ、次世代のリーダーとして必要な能力を早期に学ばせることができます。また、社員の仕事に対するモチベーションや満足感も上がるため、離職率を低下させて、優秀な人材の流出を防ぐ効果もあります。

厳しい時代に生き残っていくためには、優秀な人材の育成と確保が重要です。人事は積極的に権限を委譲し、会社の活性化につなげるようにしましょう。

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